エネルギー戦略

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今回のテーマはエネルギー戦略の話だが、それもアメリカの戦略であり、これは以前からアメリカでも大きな問題になっていたことであって、大統領選の一つの争点になっている。オバマ氏は頻繁にガソリン価格の上昇がアメリカ経済を損なっていると機会あるごとに言い続けているし、実際アメリカのガソリン価格は大幅な上昇を続けているらしい。とはいえ、もともと日本の価格とは比べ物にならないほど安いのだが、車以外にまともな移動手段を持たないアメリカ人にとって、ガソリンの重要性は日本人が想像する以上のものだ。

また、アメリカは世界でも屈指のエネルギー浪費国家であり、後述するようにアメリカの外交は石油に多く関連している。これについては追々書いてゆくが、しかし、アメリカのエネルギー戦略が大きく変わることで日本にもそれなりの影響があることを理解するべきではないだろうか。

赤文字は引用

米国、中東石油依存脱却へ 国内エネルギー増産で

 【ヒューストン】米国が中東から輸入する石油の量は2010年代末までに半減し、2035年には完全になくなる可能性がある――エネルギー専門家はこう予想する。需要が減少しているうえ、西半球で新たな石油資源の開発が急速に進んでいるためだ
 
 現在、世界の石油産出国は主として中東に偏り、そしてその地域は極めて独裁色の強い前近代国家が占めており、更にイスラム圏であることが特徴的だ。しかし、このところ中東の春でリビア、エジプトなどで独裁政権が倒れ、シリアもおそらく時間の問題だろう。独裁国家なりに安定していた状態はもはや期待は出来ず、おそらく民主化もままならずに今まで以上に不安定な状態が続くだろう。
 
 独裁国家が倒れ民主化を模索するようになることは、世界の発展にとってはむろん喜ばしいことなのだろうが、民主化は国民が願ったところですぐに実現するわけではなく、国民にその素質がなければ到底民主化など無理なことだ。そのうえ、イスラム圏では宗教が極めて強く国民を支配している。数十年単位でこの地が安定し民主国家が軒並み誕生するなどはあり得ず、今後は今まで以上に混乱が続くと見なければならない。
 
 またそれにイランの核問題や、イラクの未だに落ち着かない不安定な内情、それに一見落ち着いているかのように見える最大の石油産出国サウジアラビアも、前近代国家であり、世界中に膨大な予算を費やしてイスラム教の輸出をしている。むろん、イスラム原理主義国家の独裁国家であり、到底アメリカとの価値感は真反対と言っていい。それでもアメリカが今までサウジアラビアを優遇し、最優秀の武器を売り、穏健な外交に努めてきたのは、ひとえに石油確保のためであった。
 
 今、石油の生産地図が大きく変わろうとしている。
 
 
技術の進歩により、シェール層やオイルサンド(油砂)、海底の奥深くに眠っていた新たな石油資源の開発が可能になり、米国の経済とエネルギー安全保障に大きな影響をもたらした。この思いがけない幸運は、水圧破砕法(ハイドロリック・フラクチャリング、フラッキングとも呼ばれる)の普及によるところが大きい。かつては掘削する価値がないと考えられていた米国の埋蔵地で、10年がかりで確立された技術だ。

 実はこれも今の石油価格が高止まりしているから成り立つのであって、実際にアメリカから膨大な石油が産出供給されるようになると中東石油は暴落し、結局またアメリカ製の石油コストが太刀打ちできなくなる。そのためには急速に技術開発を進め、採掘量を増やし中東石油の値段が下がっても更にアメリカ産石油の価格がそれに太刀打ちできるようにならなければ意味がない。それが本当に短期間で出来るかどうかはまだはっきりとは判らないだろう。

 この変化により、米国の政策決定での長年の目標が達成される。つまり、近隣の安定的な資源からの石油輸入を増やし、地球の裏側の不安定な地域からの輸入を減らすことが可能になる。米国務省のエネルギー担当高官、カルロス・パスカル氏はインタビューで、「これまでは中東情勢が混乱した場合、米国への持続的な(石油)供給が確保できるかという深刻な懸念が現実にあったが、もはや事態は変わった」と述べた。
 
 しかし確かに有望であるし、戦略的にも今まで中東との関係に費やしてきたコストをこの新しい採掘技術に振り向ければ良いのだが、それが実現しないうちは中東からすぐに手を引くわけにも行くまい。何しろ、今までアメリカは中東に関わりすぎたのだ。
 
 アメリカは所詮ヨーロッパから発生したヨーロッパ文明を引き継ぐキリスト教国家であり、長年のイスラム圏との確執も引き継いでいる。しかし、豊富な石油資源を元に確実にイスラム圏はその影響力を広げ、今では世界のイスラム教徒は確実に増え続けているし、それに特に貧困層に深く浸透している。アメリカでもマイノリティを中心にイスラム教が浸透しているのであり、これはアメリカにとっても由々しい問題だが、今の所適切な手を打てない。
 
 イスラム教が貧困層に広がるのは、その助け合いの精神があるからで、例えばザカート(喜捨)で収入の一定量を常に貧しい者に施す戒律があり、ハマスにしてもアルカイダにしてもタリバンにしても、常に貧しい者に施しをすることで支持を集めてきた。
 
 キリスト教社会で、まやかしの平等を親切ごかしに押しつけられる事に嫌気のさしていマイノリティが、同じイスラム教徒はすべて兄弟だと説くイスラム教に改宗するのは当然なのかも知れない。しかし、本来はイスラム教の施しの精神は、富者と貧者を明確に分け固定化するだけの事なのだが、それを理解するほどの人間なら改宗などしないのではないか。
 
 つまりアメリカのエネルギー供給源が中東から離れることが出来るのであれば、多生のコスト高は充分カバーできる。今まで戦争に費やしていたコストが確実に減るのだから。

 このことは、米軍がこの地で数十年間行ってきた石油海上輸送路の護衛活動を今後も続けることを意味する。米ブルッキングス研究所の国家安全保障専門家マイケル・オハンロン氏は、「他の誰にも護衛はできない。もしこれを止めたら米国の石油価格が上昇する」と述べる。同氏によると、米国は石油輸送の護衛に年間500億ドル(約4兆円)を費やしている。ただ、中東産原油の消費量が増大している中国はこの地域でのプレゼンス拡大を狙っており、ソマリア沖での海賊対策活動に海軍を参加させている。
 
 今アメリカが中東石油の海上輸送路の護衛を続けるのは、あくまでアメリカにとってもそれが有効だからであり、またこの海域を誰の手にも渡さないと言う意思表示でもあるだろう。仮に石油運送が減っても、なおアメリカにとっての中国封じ込めに必要な同盟国にとって重要な物資の輸送路であり、それを中国の手に渡すことはアメリカの重大な地位の低下につながる。

 それでも国内エネルギー生産量の増加に伴い、米国は予測不可能な地域への関与を徐々に減らしていくことができるだろう。中東産原油への依存は、ほぼ半世紀にわたり、米国の外交、国家安全保障、防衛政策を左右し続けてきた。
 
 もうひとつのアメリカの弱点は中東石油に依存していたことなのだがこれが解消されることはアメリカの世界戦略に十分な余裕を与える。ヨーロッパに対してもアメリカ産石油はすぐに運べるし、また今後中国を牽制するために必要なアジア諸国を引きつけるために、中東から手を引けばそれだけ十分な体制を組める。本音を言えば、アメリカもヨーロッパも、石油さえなければ中東とは関わりたくないのだ。そして本当に関わらなくてもすむようになれば、中東は次第に経済力を失い、それに連れて衰退し、多分数十年前の姿に戻るだろう。後は彼ら同士で幾ら殺し合いをしても欧米が関わる必要はない。
 
 中東石油から脱却すれば、米国は最大のエネルギー同盟国となりつつあるカナダや、強力な貿易パートナーである近隣の中南米諸国との関係を深めることになる。こうした国々から石油を買う際に支払ったドルは、イラク産やサウジアラビア産原油の購入に支払ったドルに比べ、米国に還流する可能性が高い。
 
 さらに、イラクサウジ産石油には、軍事費というまことに高価な付帯価格が着いていた。これが無くなるのだ。
 
 この米国のエネルギー革命は、大西洋の対岸でも注目を集めている。長い間ロシアにエネルギーを依存してきた東欧諸国は、米国企業の助けを借りて自国のシェール資源を開発したいと考えている。
 
 東欧諸国にどれだけのシェール資源があるかは判らないが、有ると考えても自然だろうし、それにいずれ石油価格が下がり、また大西洋の対岸から石油が買えるのであれば、今のようにロシアに首輪を着けられている状態からは逃れられる。
 
 別の話題だが、リトワニアが最近日立から原子炉を買う決定をした。これもロシア産のガスをどれだけ彼らが嫌っているかの一つの証だろう。そのロシアだが
 
 南北米大陸で新たな石油資源が開発される結果、石油価格が今後数年間、横ばいか下落に転じる可能性があるとの見通しは、ロシアにとって大きな懸念材料だ。
 
 ベロウソフ経済発展相は、ロシア経済の新たな推進役を見つけることは「途方もない難題」だと話す。

確かに石油価格の高騰でロシア経済は崩壊直後から相当持ち直した。しかし、その石油価格が今後上がらない、むしろ買い手が嫌って売れなくなるとしたら、それはロシアにとっても大変なことだ。なにしろ、ロシアには石油以外はマトリョーシカくらいしか売れるもがないのだ。

アメリカにとって、ロシアの弱体化は歓迎すべき事であり、中国を牽制しながらロシアが弱体化する米国産石油には大変な価値がある。

 米石油産業の再生は石油価格を押し下げ、世界的な減速で需要が低迷しかねない状況のなかで景気を推進している。調査会社のレイモンド・ジェームズは今月、2013年の米国の原油価格予想を1バレル83ドルから65ドルに引き下げた。米国内での生産量が予想以上の急ペースで増加していることも要因の一つだ。
 
 もうひとつ米国での石油価格低下には良い点がある。なにしろ、アメリカははなから自然再生エネルギーなどの馬鹿なものに期待はかけておらず、原子力を今まで以上に推進する姿勢を示している。この姿勢は仮にアメリカ石油が大増産されても当分は変わらないだろう。しかし、アメリカが自然再生エネルギーに対しては当初から余り熱心ではなかったのは、基本的にエネルギー源を国内に温存していたからだ。
 
 シェール資源も新しい技術で得られただろうが元々アメリカにはかなりの大油田が眠っているし、石炭も豊富だ。ただ、中東石油の方が安かったから買っていたに過ぎない。
 
 自然再生エネルギーなど実現性はないし、それより由々しいのは食料供給国であるアメリカが食料である大豆をバイオエネルギーのために生産し、トウモロコシなどの食料生産が大幅に減った時期がある。今はそのブームも過ぎているようだが、同じ事はブラジルでもあって、石油の足りないブラジルではサトウキビから作ったアルコールをガソリンに大量に混ぜて使っていた。

 新たに発見された石油資源の大半が海底奥深くの巨大岩塩ドームの下に埋まっているブラジルでは、シェブロンの沖合油田で小規模な原油漏れが発生し、刑事責任にまで発展した。同社はこれに異議を唱えている。また、国営石油大手ペトロレオ・ブラジレイロは今月、2020年の自社の世界生産量予想を11%引き下げるとともに、石油の抽出には想定以上のコストがかかるとの見通しを示した。
 
 ブラジルには自国の石油資源を独力で開発する技術がないが、しかし中東石油湯に頼らなくても済む、また効率の悪いアルコールに頼らなくても済むのであれば自国の石油開発にコストをかける意味がある。なにしろ、これから発展しようと言うのにエネルギーがなければどうしようもなく、同国のエネルギー不足はトウモロコシで車を走らせるほど逼迫していたのだ。

 IHSケンブリッジ・エナジー・リサーチ・アソシエイツ(CERA)によると、世界の石油・ガス投資額は2003年から2011年の間に3倍に増えた。政治的に安定した米国とカナダが位置する西半球では4倍近くにまで膨らんだ。2011年には世界石油投資額の48%(3200億ドル)が南北米大陸に投じられた。2003年の39%から上昇した。
 
 もともと、まとまって存在する石油が極めて偏った地域、それも中東イスラム圏に集中していることが問題だったが、それが解消されることは世界の安定にとっても極めて喜ばしいことだろう。あとは、中国の異常な台頭と、焦るロシアの悪あがきが問題になる。

 IHS CERAのアナリスト、ジム・バークハード氏は、「米国の石油生産量は40年間近く完全に減少傾向にあり、この減少に歯止めがかかるとは決して考えられなかった」と指摘。「これは大きな転換点だ」と語った。
 
 もう30年以上前だが、初めてアメリカに行った時あらゆる所に小規模な油田があって、あの独特な形のシーソーのようなポンプが石油を汲みだしていた。アメリカには膨大な石油があるのだと思っていたが、そのころから中東で次々と大規模油田が開発されその大半をアメリカ企業が牛耳ることで、アメリカが世界のエネルギー市場を支配するようになってきたのだと思う。が、中東石油がもしシェアを落とし続ければ、この地域でのアメリカ企業の支配も終わる。これもまた良いことではないのか。

安くなった中東石油は今まで石油を買えなかった発展途上国に行くだろう。これもまた、世界の安定につながる。

 現在、米国のエネルギー輸入が減少する一方で、発展途上国では貧困から脱した数億人の人々がエネルギー消費量を拡大し始めている。シェル米国部門の社長で、西半球の探査・生産活動の責任者でもあるマービン・オーダム氏は、「こうした状況になり、非常に幸運だ」と語る。「これで新興経済圏への資源流入が可能になる」と同氏は言う。
 
 さて、この状況が日本にとって良いのか悪いのか。かなり良い影響があるとは思うが、このままではエネルギー源をアメリカに支配されるのは変わらない。今の所アメリカとは同盟国だが、基本的に食料やエネルギー国防などを他国に支配されているようでは、到底まともな主権国家とは言えない。
 
 とはいえ、不安定な中東から海賊や中国を警戒しつつ大量の原油を運んでくるよりは、太平洋を一またぎでアメリカから運んでくる方がよほど安全だろう。しかし、日本にもエネルギー資源が大量に存在すると最近判ってきている。が、コスト的に実用化が出来ていない。アメリカのシェール資源はすでに開発が進み実用化されているのとは大違いだ。
 
 だが、アメリカのシェール資源が技術革新で採掘の対象になったように、是非日本の技術革新で海底ガス油田、メタンハイドレートなどを実用化して欲しいものだ。
 
 ただし、これも繰り返しになるが、これで原発は要らなくなるわけではない。原発は建設コストと廃炉コストが大半であり、これらは発電しながら消却しているのであって、つまりは現存の原子炉での発電コスト自体はほぼ只なのだ。したがって、自前の化石燃料も結構だが、電気を取り出しても取り出さなくても償却費だけがかかってゆく原子炉を唯それだけに放置しておくことがどれだけ無駄か理解すべきだ。
 
 原発の再稼働は、アメリカのオイルシェールがどうであれ、メタンハイドレートがどうであれ、兎に角推進してゆかなくてはならないし、安定供給とコストの面で新規の原発建設も必要であることは全く変わらない。
 
 もうひとつ、人間は楽な生活を捨てられない。今原油が高いから省エネ技術が発達し、地球環境にも目が向いているが、これで石油のがぶ飲みが出来るとなれば、あのアメリカ人が省エネなどあっという間に忘れるのは目に見えている。
 
 ところで、日本だが、なにしろ、再生エネルギー電力強制買い取りなどという馬鹿な法律など一日も早く撤回して再生エネルギー設備には新しい税金をかけるくらいにしなければならない。とにかく、無責任で無知な政権が、こんな買い取り法案などを持ち出すのも、国民が無知だからだ。そして、現実に電気代が大幅に上がって、今になって電気代を上げるなと言っても誰のせいでこうなったと言うだけのことではないのか。

上記に引用されているURLの記事を読む場合は下記の「続きを読む」をクリックしてください。但し、内容確認以外なら、敢えて読む必要はありません
以下は参照用の資料ですので、確認をされる以外はあえて読む必要はありません。


米国、中東石油依存脱却へ 国内エネルギー増産で


2012年 6月 28日 10:13 JST

 【ヒューストン】米国が中東から輸入する石油の量は2010年代末までに半減し、2035年には完全になくなる可能性がある――エネルギー専門家はこう予想する。需要が減少しているうえ、西半球で新たな石油資源の開発が急速に進んでいるためだ。

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Bloomberg News

米ノースダコタ州ワットフォードシティ郊外でガスパイプラインを敷設する作業員。同州では過去5年間で石油・天然ガスの生産が急増している

 技術の進歩により、シェール層やオイルサンド(油砂)、海底の奥深くに眠っていた新たな石油資源の開発が可能になり、米国の経済とエネルギー安全保障に大きな影響をもたらした。この思いがけない幸運は、水圧破砕法(ハイドロリック・フラクチャリング、フラッキングとも呼ばれる)の普及によるところが大きい。かつては掘削する価値がないと考えられていた米国の埋蔵地で、10年がかりで確立された技術だ。

 米エネルギー情報局によると、2020年には米国で消費する原油の半分近くが国産となり、82%が南北米大陸産になるという。また石油輸出国機構(OPEC)は先頃、自動車エンジンの効率化や再生可能燃料の供給増加で需要が減少することなどから、2035年には中東から北米への石油輸出量が「ほぼゼロになる可能性がある」との予想を発表した。

 この変化により、米国の政策決定での長年の目標が達成される。つまり、近隣の安定的な資源からの石油輸入を増やし、地球の裏側の不安定な地域からの輸入を減らすことが可能になる。米国務省のエネルギー担当高官、カルロス・パスカル氏はインタビューで、「これまでは中東情勢が混乱した場合、米国への持続的な(石油)供給が確保できるかという深刻な懸念が現実にあったが、もはや事態は変わった」と述べた。

 米当局者らは、中東は今後も石油の国際価格に影響力を持ち続けるため、米国の外交政策にとって重要な存在であることに変わりはないと強調する。パスカル氏は、「グローバルな市場の動きを引き続き注視する必要がある。こうした市場の安定がわれわれの基本的な利益だからだ」と語る。

 このことは、米軍がこの地で数十年間行ってきた石油海上輸送路の護衛活動を今後も続けることを意味する。米ブルッキングス研究所の国家安全保障専門家マイケル・オハンロン氏は、「他の誰にも護衛はできない。もしこれを止めたら米国の石油価格が上昇する」と述べる。同氏によると、米国は石油輸送の護衛に年間500億ドル(約4兆円)を費やしている。ただ、中東産原油の消費量が増大している中国はこの地域でのプレゼンス拡大を狙っており、ソマリア沖での海賊対策活動に海軍を参加させている。

 それでも国内エネルギー生産量の増加に伴い、米国は予測不可能な地域への関与を徐々に減らしていくことができるだろう。中東産原油への依存は、ほぼ半世紀にわたり、米国の外交、国家安全保障、防衛政策を左右し続けてきた。そのため米国は、アラブとイスラエルの和平交渉に積極的に関与し、ペルシャ湾岸諸国の王族と緊密な協力関係を結び、イラン・イラク戦争ではイラクを支援せざるを得なくなり、後にイラクがクウェートに侵攻すると今度はイラクを敵として湾岸戦争を引き起こし、その後もこの地域で軍事的プレゼンスを維持・拡大してきた。

 こうした戦略がこの地域での米国の影響力確保にどのように役立ったかはさておき、いずれも相当な代償を支払う結果となった。アラブとイスラエルの和平プロセスでは、地域内の最も急進的な勢力がパレスチナ国家の樹立を果たせなかったことに憤慨し、米国に敵意を抱くようになった。この地域で米国の軍事的プレゼンスを高めようとしたことは、アルカイダなどの過激派組織が反米感情を煽り、米国を攻撃する際の口実に使われた。

 中東石油から脱却すれば、米国は最大のエネルギー同盟国となりつつあるカナダや、強力な貿易パートナーである近隣の中南米諸国との関係を深めることになる。こうした国々から石油を買う際に支払ったドルは、イラク産やサウジアラビア産原油の購入に支払ったドルに比べ、米国に還流する可能性が高い。カリフォルニア州ラホヤにあるインスティテュート・オブ・アメリカズのエネルギー・プログラム・ディレクター、ジェレミー・マーティン氏は、中南米諸国の経済がオイルマネーで潤えば、貧困者が北方の米国に移住する魅力も薄まると指摘する。

 この米国のエネルギー革命は、大西洋の対岸でも注目を集めている。長い間ロシアにエネルギーを依存してきた東欧諸国は、米国企業の助けを借りて自国のシェール資源を開発したいと考えている。さらに、エネルギー大国としての地位を保つため新たな石油資源を必要としているロシアも、米国最大の石油企業エクソンモービルとともに水圧破砕法に着手する。エクソンとロシア国営ロスネフチは今月、従来の提携関係を拡大させ、シベリア西部の石油埋蔵地の共同開発に乗り出すことを決めた。

 南北米大陸で新たな石油資源が開発される結果、石油価格が今後数年間、横ばいか下落に転じる可能性があるとの見通しは、ロシアにとって大きな懸念材料だ。プーチン大統領が権力を握ってから12年間、政府支出を8倍に増やし、年金・給与の引き上げや、ソチ五輪などのコストのかかるプロジェクト、大規模な軍事増強を実現することができたのも、石油収入が増加していたからこそである。プーチン政権は現在、石油価格とそれに伴う税収の減少を受け、慌てて緊縮手段を見出そうとしている。ベロウソフ経済発展相は、ロシア経済の新たな推進役を見つけることは「途方もない難題」だと話す。


 米国内の石油事情は、今年の米大統領選でも取り上げられている。オバマ大統領は、自分の第一期目に生産量が急増したことを強調したがる。「われわれは、地球一周分以上の石油・ガスパイプラインを新たに開発した」と、大統領は今年行った演説で述べている。一方、共和党の大統領候補に内定しているロムニー氏は、米国は国内での探査活動をもっと推進するべきだと主張し、オバマ大統領が石油産業を阻害していると批判する。ロムニー氏は選挙広告で、「就任初日」にキーストーンXLパイプラインを承認すると約束している。これはカナダから石油を輸送するためのプロジェクトで、オバマ政権は今のところ承認していない。

 米石油産業の再生は石油価格を押し下げ、世界的な減速で需要が低迷しかねない状況のなかで景気を推進している。調査会社のレイモンド・ジェームズは今月、2013年の米国の原油価格予想を1バレル83ドルから65ドルに引き下げた。米国内での生産量が予想以上の急ペースで増加していることも要因の一つだ。

 しかしその一方で、西半球の石油資源開発を阻害する要因も残る。

 アルゼンチンは最近、スペインのエネルギー大手レプソルが国内の潜在的石油資源の開発に十分な投資を行っていないとして、同社の資産を国有化した。この動きを受け、投資家は、米国の好調な油田に対抗し得るアルゼンチンのシェール層開発にリスクを冒して資本を投じることに二の足を踏むようになった。

 新たに発見された石油資源の大半が海底奥深くの巨大岩塩ドームの下に埋まっているブラジルでは、シェブロンの沖合油田で小規模な原油漏れが発生し、刑事責任にまで発展した。同社はこれに異議を唱えている。また、国営石油大手ペトロレオ・ブラジレイロは今月、2020年の自社の世界生産量予想を11%引き下げるとともに、石油の抽出には想定以上のコストがかかるとの見通しを示した。

 一方、米国メキシコ湾の海洋掘削は、2010年の「ディープウオーター・ホライズン」原油流出事故の影響から徐々に立ち直りつつある状況だ。

 それでも米政府の関係者は、米国が中東、アフリカ、欧州から輸入する石油の量は現在の日量400万バレル超から2020年には約250万バレルにまで減少すると予想する。ペルシャ湾岸のOPEC加盟国(サウジアラビア、イラク、クウェートを含む国々)からの輸入量も、同年には現在の日量160万バレルから86万バレルに減少する見通しだ。

 IHSケンブリッジ・エナジー・リサーチ・アソシエイツ(CERA)によると、世界の石油・ガス投資額は2003年から2011年の間に3倍に増えた。政治的に安定した米国とカナダが位置する西半球では4倍近くにまで膨らんだ。2011年には世界石油投資額の48%(3200億ドル)が南北米大陸に投じられた。2003年の39%から上昇した。

 こうした資金の多くが米石油産業の再生に投じられた。そして米国では、化学薬品と砂を混入させた水を硬い地層に高圧噴射で注入して石油を生産するという、収益性の高い技術が開発された。環境活動家らは、この技術は水を過剰に使用するうえ水道水を汚染する可能性があるとして懸念を示している。

 水圧破砕法はもともと天然ガス田で開発された技術だ。それが思いがけない石油ブームをもたらし、米国のエネルギー地図を書き換えるに至った。豊富な原油に大規模な精製施設、これに国内需要の低下が重なった結果、米国は昨年、石油精製品の純輸出国となった。エネルギー情報局は、この状況が2020年以降も続くとみている。

 かつては小規模生産地だったノースダコタ州は、地元バッケン・シェール鉱区での水圧破砕法による開発が奏功し、今年3月には石油生産量でアラスカ州を抜くまでに成長した。今やテキサス州に次ぐ第2位の石油生産州である。

 バッケン鉱区とテキサス州のイーグルフォード・シェール鉱区、それにメキシコ湾深海鉱区での好調な生産により、米国の1日当たり平均石油生産量は、2011年10月から2012年3月の間に6%増加し、1998年以来初めて日量600万バレルを突破した。エネルギー情報局が今月明らかにした。

 IHS CERAのアナリスト、ジム・バークハード氏は、「米国の石油生産量は40年間近く完全に減少傾向にあり、この減少に歯止めがかかるとは決して考えられなかった」と指摘。「これは大きな転換点だ」と語った。

 カナダのオイルサンド―ここの土は濃いタール状の油にまみれている―には、世界最大級の石油量が埋蔵されているが、長年、開発コストが高すぎる状況が続いていた。企業は、石油1バレルを生産するために油まみれの砂を何トンも採掘するか、地下深くに蒸気を注入し、抽出可能な程度まで油を液状化させなければならなかった。

 1999年から石油価格が上昇し始めると、オイルサンドの収益性も高まっていった。サンコー・エナジーやエンカナといったカナダの国内企業や、ロイヤル・ダッチ・シェルなどの国際企業が早くから投資を行ったおかげで、カナダは米国最大の石油輸入先に成長した。それから数年後、アルバータ州の北方林には、コノコフィリップスやエクソンモービルなどの米企業や、中国石油化工(シノペック)、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国海洋石油(CNOOC)などの中国企業からも資金が流入するようになった。

 長年、石油輸入に依存してきたブラジルは、深海技術の発展により2009年に純輸出国となった。30年間で最大規模の海洋油田がいくつか発見されたため、2020年には同国の生産量は57%増の日量470万バレルに達し、カナダに匹敵する見通しだ。

 現在、米国のエネルギー輸入が減少する一方で、発展途上国では貧困から脱した数億人の人々がエネルギー消費量を拡大し始めている。シェル米国部門の社長で、西半球の探査・生産活動の責任者でもあるマービン・オーダム氏は、「こうした状況になり、非常に幸運だ」と語る。「これで新興経済圏への資源流入が可能になる」と同氏は言う。

記者: Angel Gonzalez

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