脱原発派はなぜ不確かな物を前提とするのか

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7月31日 NHK討論をラジオで聴いていて、またかと思ったことがある。出席者は次の人々だった。

民主党 政策調査会長・国家戦略担当大臣・玄葉 光一郎
自由民主党 政務調査会長・石破  茂
公明党 政務調査会長・石井  啓一
みんなの党 政策調査会長・浅尾 慶一郎
日本共産党 政策委員長代理・笠井  亮
社会民主党 政策審議会長・阿部  知子
たちあがれ日本 参議院幹事長・片山 虎之助
国民新党 政務調査会長・亀井 亜紀子

石破氏以外、脱原発に反対する人はいないはずだとの(多分)阿部氏の発言に意義を挟んでいない。しかし、脱原発は国民の総意ではなく、公共の電波を使ってこのような印象操作をするのは、佐賀県知事や原子力保安院の印象操作より広範囲であり、しかもそれに対する問題提起がなされないだけ悪質ではないのか。

赤文字は引用

児玉龍彦氏の発言に対する疑問

この記事の中で青文字は児玉氏の言葉

「これがメルトダウンして放出されるとなると、細かい粒子がたくさん放出されるようになります。そうしたものが出てまいりますと、どういうことがおこるかというのが、今回の稲藁の問題です。」


ここをとやかくいうのは本質ではないと思いますが、これを聞いた人は「核燃料が粒子となって飛び散った」と解釈するでしょう。

しかし、被災直後から「ベントによる放射性物質の放出」とされているように、燃料溶融と放射性物質の拡散は直接関係ないはずです。水素爆発による原子炉建屋の破壊も放射性物質拡散の原因でしょうが、核燃料の一部が吹き飛ばされたかどうかは誰にもわからないし、おそらくその可能性は低いでしょう。


「プルトニウムを飲んでも大丈夫という東大教授がいると聞いて、私はびっくりしましたが、α線は最も危険な物質であります」

プルトニウムは体内摂取比率も非常に低く、ほとんどが時間と共に排出されてしまうので、紙1枚も通過できないα線では消化管の壁をひっかく程度のことでしょう

ただし、プルトニウムの化学的毒性は極めて高く、おそらく単一元素物質では最悪だろうと言われているので、プルトニウムを飲んで安全というわけではない。放射線被曝は微少だが、化学毒性は最悪と言うこと。

ただし、現在放出されているというプルトニウムは検出限界ギリギリの量で、化学毒としても全く無視できるレベル。ちなみに、60年代に繰り返された核実験の結果、世界中にプルトニウムが飛散し、全人類の一人平均数ピコキュリーは体内に取り込んでいると言われている。本来、天然プルトニウムは自然界には存在しないと考えられていたほどわずかしか存在しないので、今人体や自然界で検出されるプルトニウムはほとんど全て核爆発による物。したがって、故意にプルトニウム化合物でも摂取しない限り、プルトニウムの化学毒で健康を害するなどの量は考えられない。

また、児玉氏は「α線は最も危険な物質」と言っているがトンデモ発言。α線は放射線物質から飛び出すヘリウムの原子核同等の電荷された粒子であり、単独で存在する物質ではない。この人は、α粒子という物質がその辺に降り積もっていると思っているのではないか。本当にこの人はアイソトープの専門家なのか。知らないはずがないが、だとすれば素人を脅かすための作り話をしているとしか思えないが。


しかしながら1991年に最初、ウクライナの学者が甲状腺癌が多発しているというときに、日本やアメリカの研究者は、ネイチャーに、これは因果関係が分からないということを投稿しております。なぜそういったかというと1986年以前のデータがないから統計学的に有意だということが言えないということです。

これについては後述するが、統計的に有意ではない物を、理論上危険だから危険だと言いくるめる無茶な論法をこの手の人たちは恥ずかしげもなく主張する。

しかし統計学的に有意だということが分かったのは、さきほども長瀧先生からお話しがありましたが、20年後です。20年後に何が分かったかというと、86年から起こったピークが消えたために、過去のデータがなくても因果関係があるということがエビデンスになった。いわゆるですから疫学的な証明というのは非常に難しくて、全部の事例が終わるまでだいたい証明できないです。

これは20年後にそのように計算できると言っただけのことであり、エビデンスでも海老蔵でもない。それについては、この記事の筆者は次のように疑問を呈している。

これはたしかにそう言えるのかもしれませんが、もっとも大事な要因は「甲状腺にもともとヨウ素が満たされているか」であり、これは年齢に関係ないことです。

参考:がんの放射線治療──その3 放射性ヨウ素内用療法|
巻末 この資料は巻末に載せてある


1991年に最初、ウクライナの学者が甲状腺癌が多発しているというときに、日本やアメリカの研究者は、ネイチャーに、これは因果関係が分からないということを投稿しております。なぜそういったかというと1986年以前のデータがないから統計学的に有意だということが言えないということです。

つまり、その時は説明できなかったが、20年経ったら因果関係が説明できるようになったからあれはチェルノブイリから飛散した放射性ヨウ素で子供達が甲状腺癌になったのだ、とまとめていることになるが、因果関係が説明出来たとして、実情がそれを示していなければ説明と事実は違うということ。表に現れない数字でも、因果関係がそうだから必ずそうであるはずだというのでは、どこにでも屁理屈はくっつくという見本ではないのか。

だから、筆者もとうぜん次のように結論づける。

それにしても、この手の「わかってないから心配しろ」の理屈は他のトンデモ学者から何度か聞かされました。一種の脅迫だと私は感じています。

私たちは現在わかっている範囲内で科学を信用して対処するしかない。未来の知見を利用することはできないのだから、結果的にそれが間違いだったとしても、現在の仮説に基づいて行動するしかないのです。



普通に理論的に考えられる人なら、当然そう考えるのではないのか。仮説ならどんな物でも立てられる。

話はずれるが、かつて光は粒子か、波かとの論争が物理学会を二分していた。光は真空中を進み、また圧力を生じ、重量を持っているので粒子であるという仮説は非常に整合性があり正しいと思われたが、一方光は相互に干渉せず、屈折や回折をするので、波だと言う主張も物理的に正しいことが証明さていた。今日では、光は粒子と波の双方である、との結論がでている。

しかし、今日の結論がでるまで、光派と粒子派は互いの説が正しいとしてせめぎ合っていたわけで、それぞれが自分の確信する仮説(光と粒子の両方であるという結論がでるまで)で自分の研究をするしかなかった。もしかしたら、将来、この現在の結論も間違っているのかもしれないが、今はこの粒子と波の双方であるという説で物理学を進めてゆくしかない。

チェルノブイリの結果が実証されないけれど、今後福島のために重大な健康被害があるはずだという未来の仮説を取り入れるのは間違っているだろう。いや、それで誰も犠牲にならないなら仮説でもかまわないが、現実にそのために農家が大打撃を受け、強制避難をさせられた人々が人生を破壊され命を縮め、そして守られなければならないとされる子供達がストレスから病気になっている。将来起きるかもしれないという、実証されていない仮説でこのような犠牲を払って良いのか。

このブログによく訪れてくださる某N氏なども、同じようなことを延々と主張されるが、では、実証されていないけれどあるかもしれない脅威をどこまで取り入れ、どこまで実際に起きている犠牲(強制退避や風評被害による物、農家の出荷規制などなど)を正当化すべきなのかが完全に無視されている。

「わかってないことを心配しろ」と言って普通の人たちの行動に余計な縛りをかけるのは、科学者の取るべき態度ではないと思います。

もちろん、政府にやるべきことを進言するのは、多ければ多いほどいいでしょう。でも、私が見ても他で聞く定説らしいものと相反することをこれだけ並べられれば、信用しろという方が無理だというものです。


この児玉氏の主張については、日頃の私のブログで言っていることと非常に矛盾があり、いわば根拠のない脅迫じみていて、反論しようと思っていたところ、私よりも理論的に批判している記事が上記だったので紹介した次第だ。

 さらに付け加えるなら、放射線物質が放出された場合、一瞬で消えるなどあり得ず、必ず拡散しながらとどまるのが普通だ。だから、通常、一瞬の外部被曝にとどまるはずが無く、児玉氏がやり玉に挙げている政府基準とは、たとえばレントゲン技師の被曝制限とか、検査機器に使用されているアイソトープ取り扱い規制などに関わる問題であって一般的な原発の被曝は当てはまらない。

広島長崎でも、児玉氏はすぐにでも放射線が消えたかのように言っているが、現実には残留し続けている。また60年代の大気圏内核実験が一千回以上行われ、特に偏西風の風上で繰り返された中国の核実験の際日本に降下した放射線物質は、今回の比ではない。

つまり児玉氏は政府基準が一瞬の被曝だからけしからんと言っているが、過去の被曝のデータは長期間にわたる残留放射線物質による外部被曝、内部被曝を対象としている。

結局、アイソトープ専門の児玉氏には、その分野の感覚しかないと思われる。

上記で引き合いに出されたチェルノブイリだが、また新しい説が公表され問題になっているようだ。

福島事故で「ガン患者41万人」 「欧州放射線リスク委」予測根拠あるのか

市民団体である「欧州放射線リスク委員会」が、福島原発事故の影響によるガン患者が今後50年間で41万人余も出ると予測して、波紋を呼んでいる。根拠は本当にあるのだろうか。

実際またかと思う。

この欧州放射線リスク委員会はかつて第二次世界大戦以降、放射線が原因で死んだ人は全世界で6500万人以上としてる。しかし、実際にそれが証明されたことはない。一方ICRP(国際放射線防護委員会)は第二次大戦後放射線で亡くなった可能性のある人数を117万人としている。

つまり計算上そうであるはずだと言うだけのこと。WW2が終わって、66年経つが、その間に全世界で死んだ人は延べ数百億人くらいになるのではないか。計算してみれば正確にでるかもしれないが、いずれにせよ。百億と観てもかまわない。その内の6500万人が放射線で死んだとどのように証明できたのか。計算上そうだろうと言うだけだ。では、今後50年間で41万人の癌死者、これは先にエントリーで書いた、「恐怖を煽る似非文化人」で、作家の広瀬氏が食いついて原発関係者を刑事告訴したという数字だ。証明されない数字は、裁判でも採り上げられることはない。みんながそう言っているからこれが正しいと言う物ではない。

 福島原発事故で、3年後に日本人が死に絶える、計算上そうなるから、原発を作った奴は悪魔だと言っているのと変わりないのではないのか。
 
  7月20日には、ECRRのクリストファー・バズビー科学議長(65)が来日した。報道によると、バズビー氏は会見で、福島第1原発から100キロ圏では今後10年間でガン患者が32%も増えると指摘。政府が放射線量の規制値を年1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに緩和したことを無責任だなどと批判した。ECRRは、内部被曝を考慮して、年0.1ミリシーベルトを規制値に主張している。
 
 数値の取り方では、こんな計算はどうにでもなる。シーシェパードの主張も、理論も糞もあった物ではないが、それを信用する連中は世界中にいるし、そして金を出している。彼らにとってそれが商売なのだ。根拠などどうでも良い。
 
 このバズビー(風呂場のおならみたいで響きが汚いと思うのは私の八つ当たりである)氏が、どんな計算をしようと、それを単に飯の種にしているのでなければ、計算ではなく、過去の実績にどう当てはまるのか証明すべきだろう。そんな証明も求めずに飛びつく広瀬ダボハゼやそれに踊らされるお花畑の集団、何とかならないのか、これじゃ、十年間で日本の32%がお花畑になる。
 

ECRRは、欧州議会に議席を持つ「欧州緑の党」のイニシアティブで1997年に設立された。しかし、欧州議会の下部組織ではなく、市民団体として、緑の党と同様にベルギーを本拠に活動している。

つまり、環境テロ団体だ。

専門家は疑問呈すも、内部被曝の怖さには理解 内部被曝をどう見るかを巡っては、国立がん研究センターが2011年6月22日に開いた「放射線被ばくについての公開討論会」でも、大きな議論になった。

むろん、外部にしろ、内部にしろ強大な被曝は重大な健康被害を及ぼし、時には命を奪う。


「低線量被曝のリスク推定は科学的に困難」
一方、ICRP委員でもある大分県立看護科学大学の甲斐倫明教授は、公開討論会で、内部被曝については、「外部被曝と同じ線量なら、それよりリスクが高いという証拠はありません。リスクは同じです」と主張した。


これは、日本の六十六年間に及ぶ長崎広島の被爆者達の追跡調査でも明らかになっている。なぜなら、彼らは最初の爆発の時の強烈な外部被曝の後に、土壌や空気中にばらまかれた放射線物質を長年に渡って食べ物の摂取や呼吸によって内部に取り込んでおり、さらに環境にばらまかれている残留放射線物質による外部被曝も浴びつつづけているのであって、児玉氏が言うような、一瞬の外部被爆しか資料がないというのは明らかな間違いなのだ。

さて、またお調子者。なぜお調子者か。脱原発の理由を言わずに核兵器廃絶と同時に言うから。

吉永小百合さん「原発なくなって」 原爆詩朗読で発言

 吉永さんは朗読に先立ち、「『原子力の平和利用』という言葉を、今まであいまいに受け止めてしまっていた。普通の原子力についてもっともっと知っておくべきだった。世の中から核兵器がなくなってほしい。原子力発電所がなくなってほしい」と語った。

彼女は役者としては優れているのだろうし、どちらかと言えば好きな女優だが、個人的な思想についてはべつに関心はない。だからどうでも良いと言えばいいのだが、せめて核兵器と原子力発電所の区別くらいはつけて欲しいと思うのだが。

原爆に対する思いや核兵器廃絶の思いは、それなりの信念があってやっているのだと評価はしている。かならずしも同感はしないが、この原発廃止論はあまりに安易に過ぎる。




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以下は参照用の資料ですので、確認をされる以外はあえて読む必要はありません。


児玉龍彦氏の発言に対する疑問


2011年07月30日15時00分


 児玉参考人の国会における冒頭陳述がネットで大きな話題になっています。動画ではよく理解できなかったのですが、文字起ししてくださった方がいたので読んでみました。


児玉龍彦参考人の、国の内部被曝対応への批判が凄すぎる上に、提言まですごい!(全内容書き起こし):ざまあみやがれい!

文字にして読んでみると、いくつか疑問が湧いてきます。


飛散したのは核燃料の一部か?


児玉氏は以下のように発言しています。(以下、下線は全て筆者による)


粒子の拡散というのは、非線形という科学になりまして、われわれの流体力学の計算ではもっとも難しいことになりますが、核燃料というのは、ようするに砂粒のようなものが、合成樹脂のようなものの中に埋め込まれております。

これがメルトダウンして放出されるとなると、細かい粒子がたくさん放出されるようになります。そうしたものが出てまいりますと、どういうことがおこるかというのが、今回の稲藁の問題です。

ここをとやかくいうのは本質ではないと思いますが、これを聞いた人は「核燃料が粒子となって飛び散った」と解釈するでしょう。

しかし、被災直後から「ベントによる放射性物質の放出」とされているように、燃料溶融と放射性物質の拡散は直接関係ないはずです。水素爆発による原子炉建屋の破壊も放射性物質拡散の原因でしょうが、核燃料の一部が吹き飛ばされたかどうかは誰にもわからないし、おそらくその可能性は低いでしょう。

科学者が国会で陳述するのにこんな乱雑な認識(というか、テキトーな表現)でいいのでしょうか?


プルトニウムはそんなに危険か


児玉氏の次の発言にも驚きました。


プルトニウムを飲んでも大丈夫という東大教授がいると聞いて、私はびっくりしましたが、α線は最も危険な物質であります。

wikipediaが正確だという保証はありませんが、私にはwikipediaの記述が妥当に思えます。半減期が何万年とか何億年というと「長く影響が残る=恐ろしい」と思いがちですが、それはすなわち「放射線をチョロチョロとしか出していない」ということです。

プルトニウムは体内摂取比率も非常に低く、ほとんどが時間と共に排出されてしまうので、紙1枚も通過できないα線では消化管の壁をひっかく程度のことでしょう。

児玉氏は他に専門的な難しそうな話もされていますが、こんなにわかりやすいところで定説と違う見解を示される以上、よほどニッチな研究をされているのか、トンデモ科学者かのどちらかなのだろうな、と推察します。


放射性ヨウ素の影響について


さらに私が最近勉強したことと全く違う見解も述べられました。


次にヨウ素131。これはヨウ素はご存知のように甲状腺に集まりますが、甲状腺への集積は成長期の甲状腺形成期がもっとも特徴的であり、小児に起こります。しかしながら1991年に最初、ウクライナの学者が甲状腺癌が多発しているというときに、日本やアメリカの研究者は、ネイチャーに、これは因果関係が分からないということを投稿しております。なぜそういったかというと1986年以前のデータがないから統計学的に有意だということが言えないということです。

しかし統計学的に有意だということが分かったのは、さきほども長瀧先生からお話しがありましたが、20年後です。20年後に何が分かったかというと、86年から起こったピークが消えたために、過去のデータがなくても因果関係があるということがエビデンスになった。いわゆるですから疫学的な証明というのは非常に難しくて、全部の事例が終わるまでだいたい証明できないです。

1つずつ見ていきましょう。


甲状腺への集積は成長期の甲状腺形成期がもっとも特徴的であり、小児に起こります。

これはたしかにそう言えるのかもしれませんが、もっとも大事な要因は「甲状腺にもともとヨウ素が満たされているか」であり、これは年齢に関係ないことです。

参考:がんの放射線治療──その3 放射性ヨウ素内用療法|team nakagawa

ここには、内部被曝を利用した治療が有効になるように、海藻などによるヨウ素の摂取制限をすると書いてあります。つまり、年齢が高くてもヨウ素がカラカラの甲状腺には放射性ヨウ素がとりつくし、ヨウ素で満腹の甲状腺細胞には取り込まれないのです。

日本人は海藻などからヨウ素を摂取する量が多いので、乳幼児は別としてある程度の年齢であれば甲状腺はヨウ素で満たされている人が多いでしょう。ソ連の内陸部にはヨウ素のないカラカラ状態の甲状腺を持つ人が多かったので、深刻だったとされています。


1991年に最初、ウクライナの学者が甲状腺癌が多発しているというときに、日本やアメリカの研究者は、ネイチャーに、これは因果関係が分からないということを投稿しております。なぜそういったかというと1986年以前のデータがないから統計学的に有意だということが言えないということです。

これも不思議な説明です。検索してみたら1997年の資料に「放射性ヨウ素(131I)を用いた甲状腺疾患の治療は50年以上前から行われており」と書いてあります。

統計学的にどうこうではなくて、放射性ヨウ素が甲状腺がんの原因になることくらいは当然のこととして認知されていたはずです。


しかし統計学的に有意だということが分かったのは(中略)20年後です。(中略)ですから疫学的な証明というのは非常に難しくて、全部の事例が終わるまでだいたい証明できないです。

手前の説明がおかしいので結論部分がすっかりぼやけて見えてしまうのが残念ですが、疫学調査に膨大な事例と長い時間がかかるのは当然のことだと思います。こんな説明をしなくても、そんなことはわかります。

また、DNAの異常からがん発症までに10年以上かかるのが普通だと聞いてますので、20年くらいかけなければ影響があったかなかったかもわからないというのは正しいでしょう。そしてここに、先ほどの答えがあるような気がします。つまり、事故から5年後に癌が発症するというのは普通では考えられない、というのが、ネイチャーに書かれた日米の研究者の意見だったのではないでしょうか?

それにしても、この手の「わかってないから心配しろ」の理屈は他のトンデモ学者から何度か聞かされました。一種の脅迫だと私は感じています。

私たちは現在わかっている範囲内で科学を信用して対処するしかない。未来の知見を利用することはできないのだから、結果的にそれが間違いだったとしても、現在の仮説に基づいて行動するしかないのです。

「わかってないことを心配しろ」と言って普通の人たちの行動に余計な縛りをかけるのは、科学者の取るべき態度ではないと思います。

もちろん、政府にやるべきことを進言するのは、多ければ多いほどいいでしょう。でも、私が見ても他で聞く定説らしいものと相反することをこれだけ並べられれば、信用しろという方が無理だというものです。



福島事故で「ガン患者41万人」 「欧州放射線リスク委」予測根拠あるのか

市民団体である「欧州放射線リスク委員会」が、福島原発事故の影響によるガン患者が今後50年間で41万人余も出ると予測して、波紋を呼んでいる。根拠は本当にあるのだろうか。

ガン患者の予測は、欧州放射線リスク委員会(ECRR)が2011年3月30日に元のデータを発表した。

内部被曝考慮に入れていないと批判
それによると、福島第1原発から200キロ圏内では、今後50年間でガン発症が41万人を越え、今後10年間を見ても半数の22万人余に達するという。政府が規制値の参考にしている国際学術組織「国際放射線防護委員会(ICRP)」が今後50年間で6000人余と予測しているのに比べ、ケタが2つも違う。

ECRRでは、ICRPは呼吸や飲食による内部被曝を考慮に入れていないとし、その予測方法を批判している。

7月20日には、ECRRのクリストファー・バズビー科学議長(65)が来日した。報道によると、バズビー氏は会見で、福島第1原発から100キロ圏では今後10年間でガン患者が32%も増えると指摘。政府が放射線量の規制値を年1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに緩和したことを無責任だなどと批判した。ECRRは、内部被曝を考慮して、年0.1ミリシーベルトを規制値に主張している。

日本でも、反原発で知られる作家の広瀬隆さん(68)らが、こうした予測結果などを元に、原発関係者らを7月8日に東京地検特捜部に刑事告発したと会見して明かすまでになっている。

ECRRは、欧州議会に議席を持つ「欧州緑の党」のイニシアティブで1997年に設立された。しかし、欧州議会の下部組織ではなく、市民団体として、緑の党と同様にベルギーを本拠に活動している。

その予測結果は、どれだけ信用できるのだろうか。

専門家は疑問呈すも、内部被曝の怖さには理解
内部被曝をどう見るかを巡っては、国立がん研究センターが2011年6月22日に開いた「放射線被ばくについての公開討論会」でも、大きな議論になった。

国立がん研究センターのサイトに掲載された動画を見ると、北海道がんセンターの西尾正道病院長は、討論会でECRRの予測結果をICRPと比較してこう指摘している。…

「どっちが正しいかは、分かりません。ECRRは、よく理解できない生物・物理係数のような特殊な係数を掛け合わせており、過剰な数字になっています。ICRPも、逆に、ずいぶん少ないなというのが実感ですね。まさに政治的な立場によって、これだけのデータのばらつきがあります」
ただ、西尾病院長は、内部被曝の方がよりリスクがあって怖いことをもっと考慮すべきだと説く。放射性物質がもし体内に残留すれば、長い期間にわたって深刻な影響をもたらすからだ。特に、α・β線といった粒子線は強力な発がん性があるので恐ろしいという。

「(政府は)空間線量率を測って、γ線だけの外部被曝を問題視し、20ミリシーベルトと議論しています。しかし、これは被曝のごく一部を語っているに過ぎません。健康被害については、これだけでは、全然語れません。(政府のやり方は)虚構、欺瞞ですね。20ミリシーベルトを安全と称しているのはウソです」
医療従事者でさえ年平均で0.21ミリシーベルトしか浴びていないという。そのうえで、西尾病院長は、内部被曝の影響がまだ調べられていないとして、「排泄物を含めて放射線の量を測っていかないといけません」と指摘した。

「低線量被曝のリスク推定は科学的に困難」
一方、ICRP委員でもある大分県立看護科学大学の甲斐倫明教授は、公開討論会で、内部被曝については、「外部被曝と同じ線量なら、それよりリスクが高いという証拠はありません。リスクは同じです」と主張した。

外部・内部被曝の両方とも、粒子線の影響も考えなければならないが、まず全体としての被曝線量をみるべきだとする。20ミリシーベルトなどは、安全基準ではなく、あくまでも目安や上限値であって、そこまで被曝していいということではないという。甲斐教授は、「低線量被曝のリスク推定は科学的に困難ですが、どんなに微量でも何らかのリスクがあります」として、全体として浴びる線量を少なくすることにむしろ注力すべきではないかと指摘した。

そのうえで、甲斐教授は、西尾正道病院長と同様に、「今後は、内部被曝の線量情報もしっかり評価していくことが必要です」と提言した。





参考資料

がんの放射線治療──その3 放射性ヨウ素内用療法
福島第一原発の事故により、野菜や水道水に放射性ヨウ素(I-131)が検出され、大きな話題となりました。原発から大気中に放出されたI-131が、風に乗って各地に運ばれ、さらに雨と一緒に、畑や河川に降ったことが原因です。

I-131による「内部被ばく」で、がん、とくに甲状腺のがんが増えるのではないかという無用の懸念も広がりました。

たしかに、チェルノブイリでは、住民の避難や食品規制の乱れなど、不適切な対応があり、小児の甲状腺がんが増加しました。これまでの原発事故で、がんの増加が認められた唯一の例が、この甲状腺がんです。(放射性ヨウ素について4/8まとめも参照ください)

しかし、逆に、同じI-131が甲状腺がんの治療に利用されることもあります。私たちのチームでも、I-131を使った甲状腺がんの治療を年間、60-70名ほどの患者さんに行っています。

私たちのカラダは、おもに、水素、炭素、窒素、酸素といった“軽め”の元素からできています。原子番号で言えば、水素=1、炭素=6、窒素=7、酸素=8といった具合です。この点、ヨウ素は例外で、原子番号=53と、“重い”元素です。そして、体内にはほとんど存在しません(成人でわずか15-20mg)。

人間のカラダのほとんどの細胞は、ヨウ素を利用することはありませんが、甲状腺の細胞だけは、甲状腺ホルモンの合成のためにヨウ素を必要とします。

この甲状腺ホルモンは、細胞の代謝を促進します。車にたとえると、アクセルの役割を果たすホルモンで、進化的にみても、魚類以降のすべての脊椎動物に欠かせないものです。ちなみに、オタマジャクシからカエルへの“変態”を起こさせるのも、甲状腺ホルモンです。

甲状腺ホルモンの分子を1つ作るのに、3個もしくは4個のヨード原子が必要です。甲状腺の細胞は、ヨウ素を取り込み・貯蔵する機能を持っているのです。甲状腺の細胞だけがヨウ素を細胞内に取り入れるという性質を、がん治療に応用したものが「放射性ヨウ素内用療法」です。

なにやら、難しそうな治療ですが、実は非常に単純で、I-131を小さなカプセルに入れて、患者さんに口から飲んでもらうというものです。

元素は、“放射性”であろうとなかろうと、生体内の振る舞いなど、物質としての性質は変わりません。甲状腺細胞にとっては、I-131と通常のヨウ素(I-127)を区別はできないため、I-131を投与すると、通常のヨウ素と同じように、甲状腺細胞に取り込まれることになります。

どの臓器のがんでも言えることですが、がん細胞は、自分が生まれた臓器の細胞としての性質を受け継いでいます。甲状腺がんの細胞は、正常の甲状腺細胞から発生しますから、もともとの性質、つまり、ヨウ素を細胞内に取り込むという性質を持っています。投与されたI-131は、甲状腺のがん細胞内にも蓄積されることになります。

しかし、“甲状腺出身”だといっても、甲状腺がんの細胞は、甲状腺の正常細胞ほど、“本来の”機能を保持してはいません。日本生まれでも、長く海外で暮らすと日本語が下手になるようなものです。

甲状腺がんの他に、正常な甲状腺の組織が残っていると、投与されたI-131の大半が、甲状腺細胞に取り込まれてしまい、がん細胞への蓄積が見られず、“抗がん効果”も期待できません。このため、放射性ヨウ素内用療法は、手術で甲状腺を“全摘”した患者さんが対象となります。また、I-131のカプセルを飲む前に、海藻などの摂取をひかえる「ヨウ素制限」を行います。甲状腺がんの細胞が、ヨウ素に“飢えた“状態にしておくためです。

この3月後半に、メディアなどで、「安定化ヨウ素」が話題になりましたが、これは、放射線を出さないヨウ素(I-127)を製剤化したもので、甲状腺細胞を“満腹”にしておき、I-131を取り込まないようにする「被ばく予防法」です。

I-131は、主に、飛程(注1)が数ミリの「ベータ線」(ウィキペディアリンク)を放出します。I-131が、甲状腺がんの細胞に取り込まれれば、がん細胞だけが、“選択的に”、かつ、“内部から”攻撃を受けることになります。甲状腺がんだけを“ピンポイント”に照射できるのです。
注1: 飛程とは、ベータ線が物質(ここでは甲状腺)にぶつかってから、完全に停止するまでの距離のことです。I-131(放射性ヨウ素131)から出るベータ線の場合、その飛程は約2mmです。

I-131によって、小児の甲状腺がんが増え、同じI-131でその甲状腺がんを治療することもあるわけです。なんだか、考えさせられます。

また、I-131内用療法は甲状腺がんの他に、バセドウ病(甲状腺機能亢進症〔こうじょうせん・きのう・こうしんしょう〕)の治療にも使用されます。バセドウ病は、甲状腺細胞の働きが活発になりすぎて、甲状腺ホルモンが必要以上に産生されておこる病気です。

バセドウ病では、内科的治療(注2)が、まず行われますが、うまくいかない場合、I-131を甲状腺細胞に取り込ませて適度のダメージをあたえ、作られるホルモンの量を調整するか、手術で甲状腺を切除します。日本では、手術されるケースの方が多いのですが、海外では、I-131内用療法の方が一般的です。
注2: 内科的治療では、メルカゾールなどの抗甲状腺剤を併用します。1か月くらいで自覚症状は良くなりますが、長期間継続して服用する必要があります。白血球の数が低下するなどの副作用で服用を続けられない場合もあります。

なお、I-131内用療法で使われる放射線の量ですが、甲状腺がんの治療では、3.7~7.4 GBq(1 GBq=1,000,000,000 Bq=10億Bq)を投与しています。これは、福島第一原発で問題となっている、I-131の飲料水1kgの暫定規制値300 Bqと比べて1千万~2千万倍に相当します。(水の量で言えば、1万~2万トン!)バセドウ病でも、甲状腺がんの10分の1くらいの放射線量を使います。

ちなみに、甲状腺がんやバセドウ病のI-131内用療法による長期的な副作用を心配される方もいるかもしれません。がんの治療では、まずは、“今そこにある病気”の治療が最優先されます。しかし、バセドウ病は、“良性疾患”で、治療後も、長生きされる患者さんが多いため、I-131による“2次発がん”の危険性が危惧(きぐ)されてきました。

しかし、これまでのデータでは、I-131内用療法後の追跡調査で、奇形児が生まれる頻度は一般人と同じであることが確認されています。また、各種発がんの頻度もほとんど増加しない(増加したとしてごくわずか)と報告されています。(注3)
注3: JAMA. 1998 Jul 22-29;280(4):347-55.
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